痛風とは |
痛風発作:尿酸という物質が、関節内で結晶を形成して関節炎を引き起こします.
ひと晩で真っ赤に腫れ上がり熱感のある関節炎が、ふつう1ヶ所だけ起こります(単関節炎).
足の親趾の付け根の関節に起こることが多く、激しい痛みのために靴が履けず、サンダルで来院する方がほとんどです.足首や膝など他の関節に起こることもありますが、一度に2ヶ所出ることは少なく、強い骨破壊がなければ慢性に経過することもありません.
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偽痛風 |
鑑別を要する単関節炎としては、ピロリン酸カルシウムの結晶で誘発される偽痛風(レントゲン写真参照)、淋菌や結核菌の感染による化膿性関節炎、外傷による関節炎等があります.
リウマチ性疾患や変形性関節症による関節炎は、ふつう多発関節炎として鑑別されます.
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偽痛風に見られる関節軟骨の石灰化(膝) |

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なぜ起こる? |
尿酸はプリン体という物質から作られます.このプリン体は大部分体内の新陳代謝で生成されるもので
、生きている限り作り続けられています(尿酸は、食品だけに由来するわけではありません).通常1日に700mg位が生成され、同じ量が排泄量されるので体内の尿酸の量(尿酸プール;1200mg)に変化は起こりまん
.
尿酸の産生と排泄のバランスが何らかの原因で崩れると
、血液中の尿酸が多くなります(高尿酸血症).バランスの崩れる原因はよくわからない場合がほとんどです. しかし、腎臓の機能障害のために尿酸の排泄が悪い場合や、薬剤(利尿剤など)の影響、遺伝的な理由なとで高くなっている人もいます.
血液中と関節内の尿酸濃度は相関すると考えれています.関節内で尿酸濃度が上昇すると、ある条件下ではそれが結晶を生じます.関節内の白血球は、この結晶を異物と認識して排除するように働きます.このとき白血球から蛋白分解酵素が漏れ出して関節炎(痛み、腫れ、発熱、発赤)が引き起こされます.

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男性に多い病気 |
痛風発作を起こす人は、成人男性の100人にひとり位の割合でいますが、女性には極めてまれにしか見られません(男性の1/10以下).関節炎を起こさない高尿酸血症の人は、この10倍程度いるといわれています.
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発作がなくても治療?? |
関節内で
尿酸の結晶が形成されると
、白血球がそれを異物と認識して炎症(関節炎)を引き起こします.これが痛風発作です.
血液中の尿酸は、血管壁を傷害して動脈硬化を進めやすくするので、脳血管障害、冠動脈疾患(狭心症、心筋梗塞)等の危険因子と考えられてきました.尿酸値が高いグループに高血圧症、高脂血症の人が多いという報告もあります.最近は、
尿酸の下げすぎでも動脈硬化がすすむ(J・カーブ)という意見もあります.
尿酸が尿中に高濃度に排泄されると腎障害を引き起こし、尿酸の排泄が一層障害されます.従って、関節炎の発作がなくても、高尿酸血症の人は、
水分摂取量を増やし、尿をアルカリ性に保つ努力をし、血液中の尿酸値を適正に保つ必要があります.しかしながら、この適正値についても、まだ結論が出ていません.
正確な結論が出るまで、慎重に調査結果を待つ必要はありますが、それは痛風発作が起こるまで高尿酸血症を放置して良いということではありません.
痛風発作は
氷山の一角です
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中村 徹 著:痛風手帳、長瀬医薬品、帝国化学産業(株)編より引用 |

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肥満の是正とアルコール制限(治療の第一歩) |
プリン体は大部分体内の新陳代謝で生成されるものなので、昔のように細かい食品の制限は行われていません.しかし、これは高尿酸血症を放置して良いと言うことではありません.薬を飲むことだけが治療ではないからです.
尿酸値の高い人は、肥満の是正とアルコール制限をする必要があります.肥満の人は過食があり、代謝量も多いので尿酸の産生量が多くなります.アルコールは、少量でも腎臓から尿酸を排泄をする敷居(閾値)を高くして排泄を障害します.大量のアルコール摂取は、体内での尿酸の産生量を増やします.いずれも血中の尿酸値を上昇させる原因です.
アルコールが排泄を障害するので、「プリン体の少ないビール」という宣伝に乗ってうかつにビールをたくさん飲むのも困ります.「尿路結石(腎結石、尿管結石)が出来たら、ビールを飲んで洗い流せば良い」というのも、
酒飲みに都合の良い話のようですが、奨められる事ではありません.アルコールを含まない「水分を多めに摂取する事が必要
」というのが正しい情報です.
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薬物療法 |
発作時の治療と発作でないときの治療を分けて考える必要があります.
1:尿酸を下げる薬剤 |
過食とアルコール制限で尿酸値がコントロールできない時には、下のような2種類の成分の薬
を使い分けます.いずれも、関節炎の発作が始まってから服用しても、間に合いません.普段、尿酸値を7mg/dl以下に調節できる量と種類を決めて服用を続けます.
産生を抑制する薬:
アロプリノール ,
フェブキソスタット
(第一選択剤と考えられています)
排泄を促進する薬:
ベンズブロマロン
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2:発作時の治療薬 |
関節炎の発作が始まってしまったら、ふつうの消炎鎮痛剤を服用します.激しいときには、副腎皮質ホルモン剤が短期間(数日)併用されることもあります.
通常1週間前後で関節炎は軽快します.痛風発作時には、尿酸の排泄も多くなっています.従って、以下の尿量の確保と尿のアルカリ化も併せて行う必要があります.
昔はコルヒチンというお薬が有名でした.炎症を起こす物質を白血球から出させなくする作用で痛みの出現を抑えます.しかし、発作の起った後、つまり痛みを起こす物質が出てしまった後では服用しても効果がありません.したがって、最近ではあまり使われません.
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発作の最中は、すでに尿酸値が下がっていることもあります.通常、発作中
は尿酸を下げる薬を服用しません.
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3:尿量の確保 |
尿量が十分でないと、尿中で尿酸の濃度が高くなり結晶ができやすくなります.これは、腎臓を障害したり、腎・尿路結石の原因となります.水分摂取を充分行い、尿量を確保することが必要です.
腎・尿路結石の時には、ビールを沢山飲んで洗い流せば良いという医者がいますが、これは患者さんのウケを狙った、奨められる治療とは言えないと考えます. |
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4:尿のアルカリ化 |
尿中で、尿酸の結晶をできにくくするためには、尿をアルカリ性に保つ必要があります.
尿がPH6以下になると、尿酸の結晶ができやすくなります. 食前の尿が、酸性になりやすい人は、
尿をアルカリ性にするためのお薬
を併用することがあります.
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