高脂血症とは

体内で利用しきれない脂質が、血液中に過剰に存在する状態が高脂血症です.その原因は、大きく分けると次のような事があります.

@ 食事の過剰摂取
A 脂肪の代謝過程で働く酵素や受容体の異常
     (遺伝子レベルでの異常

高脂血症は、年齢、血圧、糖尿病や喫煙の有無等とともに動脈硬化症を進展させる危険因子と考えられています.このことは、1949年にアメリカのマサチューセッツ州・フラミンガムとう町で5,000人ほどの調査から始まった、フラミンガム・スタディーと呼ばれる研究によって確かめられました.アメリカ白人の結果ですが、危険因子と心筋梗塞や狭心症の発生の関係が、50年間以上にわたって追跡調査(コホート調査)され た有名な研究報告です.

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  冠動脈疾患のリスク予測   | Framingham Risk Score
日本人のリスク予測(MEGA Study)
メタボリック・シンドローム診断基準
ガイドライン2007による 高脂血症治療目標値の自己判定
 

 

血中脂質の基準値

空腹時(12時間以上の絶食後)の採血で、下記のいずれかの状態を高脂血症と呼びます.

高脂血症の状態が続くと動脈硬化が進展します.従って、脳血管障害(脳梗塞など)や虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)の 重大な危険因子です. ただし、基準値を超えたら直ちに薬物治療が必要というわけではありません.まず、生活習慣の改善を行う必要があります.高脂血症以外の危険因子(高血圧症、糖尿病、喫煙)を管理するの も当然のことです.

高脂血症の診断基準(空腹時採血)

高LDL血症 LDL・コレステロール
(悪玉)
140mg/dl以上
低HDL血症 HDL・コレステロール
(善玉)
40mg/dl以下
高トリグリセリド血症 中性脂肪
(トリグリセリド)
150mg/dl以上
(高コレステロール血症) (総コレステロ−ル) (220mg/dl以上)

日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007年版」)

  悪玉コレステロール(LDL)の計算表 | 危険因子の数と治療目標 の自己診断表
トランス 脂肪酸とは

 

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食事中の脂質は

小腸から吸収されてカロミクロンという形で血液中に存在します.食事直後で、カイロミクロンが多量に血液中にあると、血清は白濁します.

このカイロミクロンは、LPLという酵素で分解され肝臓に入り、一部は中性脂肪(トリグリセライド)として筋肉、心臓で利用され、脂肪組織中ではエネルギー源として貯蔵されます.

参考:【 体脂肪率とは 】

体の中に蓄積されている脂肪の量が体脂肪量、体重のうちこの体脂肪の占める割合を体脂肪率といいます. 
体脂肪測定器は、 身体に微量の電流を流して電気抵抗を計っているだけです.筋肉と脂肪では水分量分の違い から、電気抵抗率に差があります.つまり筋肉は電流を流しやすく、脂肪は流しにくいので、電流が流れやすい (抵抗が小さい)人ほど体脂肪率が低い傾向にあるということです.
この項で述べている血液中のコレステロールや中性脂肪を測定しているわけではありませんから注意が必要です.

 

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肝臓で作られた脂質

一方、肝臓で作られた脂質は、中性脂肪が主成分のVLDLとして血液中に出てきます.これは、血管壁でLPLという酵素で中性脂肪が分解され、コレステロール主成分のLDLに変わります.

その中性脂肪は、筋肉、心臓、脂肪組織中で、エネルギー源として利用されたり貯蔵されます.

LDLも各組織中で細胞膜、ホルモン、胆汁酸などの原料として利用されたり、蓄積されます.

 

過剰な脂質

生体で利用しきれない過剰なカイロミクロン、VLDL、LDL等が血液中に残っている状態が高脂血症です.その原因としては、食事の過剰摂取(@生活習慣)と 脂質代謝の課程で働く酵素等の異常(A遺伝子レベルの異常)があるわけです.

 

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コレステロールの役割

副腎のホルモンや胆汁酸の原料であり、細胞の膜の重要な構成成分です.血液中では、タンパク質と結合してLDL、HDL として存在します.

コレステロールが過剰になると

LDL・コレステロール
(悪玉)


過剰になると、血管壁に蓄積して動脈硬化を進展させるので悪玉・コレステロールと呼ばれます.

HDL・コレステロール
(善玉)

 


血管壁の動脈硬化巣から余分のコレステロールを取り出して、動脈硬化の進展を抑える働きがあり、善玉・コレステロールと呼ばれます.

以前は、90mg/dl 以上あるような人を長寿症候群と呼んだこともありますが、最近この善玉を処理する酵素(CETP)の欠損症の可能性もあることから、すべてが善玉として働くわけではないことが解ってきました.

少ない人は、運動によって増加させることができますが、多すぎるHDL・コレステロールだけを下げる薬はありません.

 

 

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中性脂肪(トリグリセ リド)の役割

脂肪組織内に蓄積されている脂肪で、重要なエネルギー源です.
採血で測定しているのは、血液中の中性脂肪の量です.タンパク質と結合してVLDLという形か、食事直後の小腸から吸収されたカイロミクロンとして血液中に存在します.

中性脂肪が過剰になると

過剰になると膵臓炎や血栓症の原因となり、動脈硬化を進展させます.特に400mg/dlを越えるとその確率が増し、1000mg/dlを越えると命にかかわることもあるといわれています.

 

 

 

 

危険因子と治療の目標値

高脂血症は、動脈硬化を進展させて冠動脈疾患(心筋梗塞、狭心症など)や脳動脈疾患(脳梗塞、脳出血など)の原因となります.高 LDL-C(悪玉)血症以外にも、下表の 危険因子は動脈硬化症を進展させると考えられています.まず、生活習慣の改善により危険因子の数を減らすことが治療の第一歩となります.

高LDL血症(140mg/dl以上)以外の主要危険因子

年  齢
(男性;45歳以上、女性55歳以上)
高 血 圧 症
(最高血圧;140mmHg以上 または 最低血圧;90mmHg以上)
糖 尿 病
 または耐糖能異常(境界型の糖負荷試験、かくれ糖尿病)
喫  煙
冠動脈疾患(狭心症、心筋梗塞)の家族歴
低HDLコレステロール血症
(40mg/dl未満) 

 

カテゴリーV(高リスク群)となる危険因子

糖 尿 病

脳梗塞の既往、閉塞性動脈硬化症

(既に心筋梗塞、狭心症のある方は、2次予防に分類されます)

上の表で、LDL-C以外の主要危険因子を 幾つ持ち合わせているか、脳梗塞閉塞性動脈疾患心筋梗塞や狭心症の既往があるかどうかによって治療の目標値 (下表)が決まります.基準値を超えたら直ちに薬物治療が必要というわけではありません.まず、生活習慣の改善を行 い高血圧症、糖尿病、肥満や飲酒、喫煙などを管理することは当然のことです.(家族性高コレステロール血症の管理はこの表に当てはまりません). 正確な食事指導や運動療法の指導をせず、直ちに薬物投与をすすめる素人のような医者 には注意が必要です.

高LDL血症(140mg/dl以上)以外の
危険因子の数による、高脂血症治療の目標値(単位;mg/dl)
(脂質管理と同時に他の危険因子を是正する必要がある)

治療方針の原則

カテゴリー

 

脂質管理目標値

 

分類

LDL以外の主要危険因子

LDL-C

HDL-C TG
(中性脂肪)
一次予防
 
まず生活習慣の改善を行い、その後薬物治療の適応を考える
カテゴリーT
(低リスク群)
160未満 40以上 150未満
カテゴリーU
(中リスク群)
1〜2 140未満
カテゴリーV
(高リスク群)
3以上 120未満
二次予防
 
生活習慣の改善とともに薬物治療を考慮する
冠動脈疾患(心筋梗塞、狭心症)の既往がある人 100未満

日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007年版」より)

ガイドライン2007による 高脂血症治療目標値の自己判定

 

治療;食事・運動による管理

善玉コレステロールを増やし、悪玉コレステローリを減少させる 事が最終目標です.検査値が基準値を超えたら直ちに薬物治療が必要というわけではありません.まず、生活習慣の変更が必要になります.

高コレステロール血症


第一目標;標準体重の維持
             (カロリー制限と運動)
第二目標;飽和脂肪酸の制限
第三目標;不飽和脂肪酸への変更
第四目標;食物繊維の摂取
第五目標;高コレステロール食の制限

中性脂肪

 


@;標準体重の維持(カロリー制限と運動)
A;糖質の摂取制限;果物、ジュース、菓子の制限
B;アルコールの制限

 

ガイドライン2007による 高脂血症治療目標値の自己判定 |

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治療;薬物療法

適切な食事と運動により、約25%ほどの低下が期待できると言われています.それだけで治療の目標値を達成出来ない時に薬剤の力を借りることになります.

薬剤の分類・作用機序 商品名


スタチン系薬剤
(HMG−CoA還元酵素阻害剤)

肝臓でのコレステロール合成を進める酵素の作用を抑えます.そのため肝臓内のコレステロールが減少し、 LDL受容体という肝臓へのコレステロール取り込み口の活性が高くなり、血中のコレステロール値が下がります.

 

リポバス

メバロチン


ローコール


  リピトール

クレストール


コレスチラミン
(イオン交換樹脂剤)

腸管内で胆汁酸と結合し、再吸収を抑えることにより、胆汁酸の産生が高まります.その結果、肝内コレステロール・プールが減少、血中のコレステロールの肝への取り込みが増加し、血中コレステロール値が下がります

 

クエストラン™

コレバイン


小腸コレステロールトランスポーター阻害薬

小腸コレステロールトランスポーターに結合することで、胆汁性および食事性コレステロールの吸収を選択的に阻害して、コレステロール値を低下させます.LDLコレステロールと中性脂肪を下げる一方、善玉コレステロール(HDLコレステロール)はむしろ増加させるといわれています.

ゼチーア


プロブコール
(作用機序不明)
 

ロレルコ

シンレスタール


フィブラート系薬剤

肝臓でのコレステロール、中性脂肪の合成を阻害します.中性脂肪を下げる効果がより強いようです.

 

ベザフィブラート

フェノフィブラート™

 

 

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